「大丈夫か?」
フサームは木に凭れ座るトゥファンに声をかける、
「申し訳ございません・・ついカッとなりあんな事を・・私はもっとアイシス様に
強くなって欲しいと、励ましたかっただけなのに」
トゥファンは目頭を押さえる
「・・・・・今は何も言わずにそっとしておこう、それとアイシス様の言葉は気にするなよ。
アイシス様は今眠ってらっしゃる、その間に王子を・・・一緒に手伝ってくれ」
「はい・・・」
トゥファンはそういうと再び中へ入った。
村人達の活気のある声が静かな部屋に響く、先まで葬儀が密かに行われた事
など村人の誰も知る事は無かった。窓の外で数人の男達が木々や草木を植えている。
知らない人はただの花壇づくりだと思うだろう、彼らはハザズ将軍を始め兵士達だった。
鎧を脱ぎ剣を捨て一同村人と同じ姿になっていた。これから生涯を通しアイシス様やイル様を守ると誓いヒッタイトへは戻らないと聞きフサーム達は彼らに村の警備や治安、間者の有無を調べる役を与え屋敷も与えていた。
「・・・ミル・・・」

小さな声で呼ぶ声にトゥファンは振り向く、随分前に出会ったころのアイシスとは全く今は別人のように見える、美しかった髪は不ぞろいに肩まで切り露わになった肩から鎖骨がくっきりと
見えるようになった痩せた体が余計に痛々しく見えた。
夢の中でイズミルを探しているのだろうか、伸ばされる手は探しているようだった。
「握ってやれよ、お前でも良いじゃないか・・・」
アイシスの傍に腰掛けていたアフザルはそういうと立ち上がりトゥファンに座るよう促した。
「・・・・・私に王子はとてもじゃないが務まらない」
トゥファンは自分が居る場所から動かなかった。
「王子を埋めたって聞いたらアイシス様どうなっちまうんだろな・・王子を探すかな」
「現実は受け止めて貰わねば・・・」
「現実って・・愛しい人を亡くした悲しみはかなりなものだぜ?お前、結構冷たい奴だな」
アフザルはそう言うと立ち上がる
「イル様を身近で誰が守らなきゃいけないと思う?アイシス様だろ・・私・・俺じゃない。
俺はアイシス様を補佐する立場しか傍に居る事は出来ない」
王族達が使う言葉をやめたのかトゥファンは以前よりも勢いよく話し出した。
「でもお前が必要な時も有るだろ」
「・・王子の様に怜悧な男でも無ければ文武両道、武芸の達人でも無い、イル様に教える事が出来るのは商人だった頃の目利き・・まぁ限られているけどな」
トゥファンはそういうと窓に額を付けると小さく呟く
「俺は俺・・・王子じゃない・・・・イズミルにはなれない」